●経営のために医師の役割を放棄する歯科医師=高額補綴を勧める歯科医にご注意=2018年01月07日

 

 歯科治療には二つの局面があります.
 腫れや痛みなどのその病気に対する対応と、その治療の結果できてしまった欠損や形態不全になどに対する対応の二つです.

 重度歯周病が治った後は歯根露出や歯の移動がおこって、歯の様子は治療開始前とは違ってくるのが一般的です.
 このような歯の状態の変化や歯を抜いてしまった後の欠損は、病気というより障碍(しょうがい)ととらえたほうがよいのではないか、と言うのは咬合三角で有名な宮地建夫先生です.

 むし歯は歯の表面についた細菌が、徐々に歯を浸食して穴をあけてしまうわけですが、この細菌を除去するのがむし歯に対する治療です.
 しかし、むし歯を削り取っただけでは穴が障碍として残ってしまいます.そこで、残された障碍に対する対応として冠や詰め物などをいれて機能回復をはかります.
 この一連の作業がむし歯治療ということになります.
 むし歯の治療にも病気に対応する局面と障碍に対する局面があるわけです.

 重度歯周病の治療では、歯周ポケットからの排膿やぐらぐらの動揺が改善して治癒を迎えても歯根露出や歯の移動などの障碍が残ってしまうのがほとんどです.
 手当のかいなく抜けて落ちてしまえば、欠損という障碍が残ることになります.
 その障碍への対応としては、義足や義手などと同様に補綴物(ほてつぶつ)による補装が必要になります.

 歯科医療は歯が抜け落ちてしまったところに入れ歯を入れることから発達したので、歯科医は伝統的に補綴物の装着に熱心です.
 言葉をかえれば、歯医者は腫れたり痛みなどの治療はさっさと抜歯することで片づけて、障碍への対応を急ぐ傾向があります.
 昨今のインプラントの流行がその流れに拍車をかけています.


 歯周病の歯が抜け落ちないようにあらゆる手を尽くす努力をしないで、「この歯は持たないから、抜いてしまいましょう」という歯科医は、歯周病という病気を治療するという医者としての役割を自ら放棄して障碍を作り出し、それに対応する義肢(歯)装具士としての歯科医療に邁進しているということになります.

 歯科医が障碍への対応に一生懸命になるのは、冠や入れ歯中心に発達してきた歯科医療の歴史もありますが、それらの補綴物やインプラントが歯科医院経営を成り立たせるためになくてはならない存在だからです.

 歯科医が障碍への対応に重きを置くことを否定はしませんが、そのために歯周病という病気に対する対応から逃げてしまうこと、すなわち簡単に抜いてしまうことは、病気を治す、歯を担当する医師としての役割を放棄してしまっているとしか思えません.


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