●寝起きに奥歯が痛みます=咬合性外傷が疑われます=歯科Q&A2018年01月20日

 
 
 三か月ほど前に左上の奥歯が寝起きにびっくりするほど痛み、その後も痛みが続くので歯科医院を受診しました。

 虫歯ではなく歯周病で、かみ合わせが悪いため上下とも抜歯と言われました。
 歯周ポケットは相当深いと言われましたが、正確な数値は覚えていません。

 6回に分けて歯石を麻酔をかけて除去するとも言われました。

 その後、左上下の全体が痛むようになり、左上の他の歯も動揺しているようで、起きている時も痛むようにもなりました.
 特に寝起きの痛みが続き痛みで熟睡できていません。
 朝方、歯だけでなく舌までも痛くて目が覚めてしまいます。

 歯周病を治したいです。
 歯ぎしり癖、噛みしめ癖もあります。

 このような状態でも診ていただけるでしょうか?
 何かアドバイスが何かあれば教えて下さい。
 どうか、よろしくお願いいたします。

 

 三ヶ月間、痛みが止まらないとのこと、さぞかし辛いことだと思います.

 メールの内容から判断すると、痛みの原因は歯周病というより、力の要素が大きい咬合性外傷ではないかと思います.
 おそらく寝ているときの噛みしめや歯ぎしりが大きな要因になっているのだと思います.

 対策としては
1.今晩から寝る前にリラックスして、歯ぎしりや噛みしめは歯の痛みになるので、決してしないように自分に言い聞かせてください.(暗示療法)
2.起きているときに上下の歯が接触しないように気をつけてください.(歯牙接触癖

 歯牙接触癖については小西歯科医院のホームページの歯牙接触癖の項をご覧ください.

 昼間、歯を接触させないような習慣をつけるのが、咬合性外傷治療のキーポイントです.
 大変だとは思いますが、ご自分で治せることですので、ぜひ頑張ってトライしてみてください.


関連項目:
歯牙接触癖


●歯周外科手術は必要でしょうか?=手術の効果は限定的です=歯科Q&A2018年01月10日



 現在アメリカ在住の60代の女性です。
 私はこちらで一番奥の歯が片方が8mm、もう一方が6mmのポケットがあり、歯茎を切る手術をするように勧められています。
 本当に手術をしなければならなければいけないのであれば、するつもりにはしております。
 しかし切らなくて済むのであればと、その可能性を伺いたく、思い切ってメールを差し上げました。



 歯周外科の必要性に関してですが8mm程度の歯周ポケットがあるからといって、慌てて手術する必要はありません.

 ポケットの深さは歯周病がどの程度進んでいるかの目安で、測定者によっても数値が変わってきますし、歯周組織の状態によっても体調によっても変わってきます.
 深い歯周ポケットがあっても、ブラッシングなどの基本的な処置をきちんとして、様子をみていくのが歯周病治療の王道です.

 スェーデンのリンデ先生やアメリカのランフォード先生をはじめとして、歯周病学者は外科処置をしてもしなくても経年的にその結果はあまり変わらないという研究結果を発表しています.((1)~(6))
 歯周炎の治癒に関して、長期的な目で見ると、手術をしてもしなくてもその結果に差はないので、手術の必要はないという結論です.

片山恒夫先生

 片山式歯周病治療は外科手術を行わないことがその特徴ですが、片山先生が非外科処置にこだわったのは以下のような理由からです.

1.歯肉を切って根元をそうじするだけのフラップ手術をしても、それで原因が除去できるわけではない
2.手術をしなくても片山式ブラッシングだけで治すことができる
3.手術をしたからといって、その後もきちんとしたブラッシングを続けなくてはならない
4.手術でも救えないような重度の歯周病でも片山式歯周治療で治すことができる
5.手術はたとえ軽いものでも、歯根露出やブラックトライアングルの出現などの障碍がブラッシングで治したものよりはなはだしい.
6.手術をすると、これだけ大変な思いをしたのだから、と患者さん自身のケアがおろそかになってしまう傾向がある.
 以上です.

 歯周病治療の結果を早く出して歯周補綴を急ぐ歯科医は、手術を勧めるかもしれませんが、きちんとした基礎治療をおこなうのが歯周病治療の基本です.
 あまり簡単に手術に踏み切らない方がよいと思います.

 歯周病の手術は、痛い思いをして、お金をとられるだけで、あまり良いことはないと思います.
 歯周病の治療では、その部を含めてしっかり歯ブラシすることが一番です.
 それで、十分目的は達せられます.

非外科処置に関する論文
(1) Lindhe.J, Westfelt.E,Nyman S,Socransky SS, Haffajee AD
"Long-term effect of surgical/non-surgical treatment of periodontal disease"
Journal of Clinical Periodontology(1984)
「歯周治療成功の決定因子は外科とか非外科とかではなく、歯根表面の廓清の質による」

(2)Ramfjord.S.P,"4 modalities of periodontal treatment compared over 5 years",Journal of Clinical Periodontology(1987),
「4つの異なった術式の5年間をフォローアップした結果、術式による効果の相違は認められなかった」

(3) Kaldahl WB et al,"Long-term evaluation of periodontal therapy:1.Response to 4 therapeutic modalities",Journal of Periodontology(1996)
「3種類の術式の7年間の経過を比較したが、術式による予後の相違は認めなかった」

(4) Kaldahl WB et al,"Long-term evaluation of periodontal therapy:2.Incidence of sites breaking down"Journal of Periodontology(1996),
「長期に経過を観察すると術式による際だった相違は認められず、それぞれ治療の効果はあがっている」

(5) Renvert S et al,"5-year follow up of periodontal intraosseous defects treated by root planing orflap surgery",Journal of Clinical Periodontology(1990),
「ルートプレーニングとフラップオペの5年後のアタッチメントレベル、骨レベルに差はなかった」

(6) Kaldahl WB ei al,"A review of longitudinal studies that compared periodontal therapies"Journal of Periodontology(1993),
「経時的に観察すると外科と非外科の予後に相違は認められない」

関連項目


●歯ぐきに膿がたまった状態を治せるでしょうか?=原因によって対応が異なります=歯科Q&A2018年01月08日


 
 
 最近、過労からか以前治療した奥歯の歯茎が腫れ、膿が溜まった状態になります。
 腫れは食事の時などにひどくなりしばらくすると収まることの繰り返しになっております。

 ネットで見る限りでは以前の治療が十分でなく、歯茎の中に細菌がおりストレスや過労などから滅菌する抵抗力が落ち、腫れてきてしまうと記述がありましたが効果的な治療法はございますでしょうか。
 もしあればご教示いただければ幸甚でございます。


 奥歯の歯茎が腫れ、膿が溜まった状態になるということですが、歯茎が腫れる原因としては大きく分けて三つほど考えられます.

1)根の先に病変ができていて、そこに膿がたまって、歯茎に腫れがでる場合(根尖病変)
2)歯が割れていて、そこからバイ菌が入り膿をもつ場合(歯根破折)
3)歯と歯肉の間からバイ菌が入り膿をもつ場合(歯周病)
 の三通りです.その他にも膿をもつ場合がありますが、ほとんどはこの三つだと考えてよいでしょう.

 ネットにあった記述は(1)の根尖病変を念頭に書かれたものだと思います.
 今回の場合、腫れが食事の時にひどくなるということなので、根尖病変も考えられますが、(2)の歯根破折の可能性が高そうです.
 歯周病の可能性は低いと思います.

歯槽膿漏-抜かずに治す p190

 膿がたまった原因によって治療法は異なりますが、根尖病変の場合は根管治療を行います.
 根管治療というのは根管の感染物質を除去する治療で、そのことによって膿を止め、根尖病変を改善することができます.
 
 歯根破折の治療としては、破折部の接着(内部接着、外部接着)、破折片の除去、歯根分割、根分割抜去などが考えられます.
 歯根破折で膿を持った場合、内部接着や外部接着による対応は難しくなります.

関連項目:

●歯根破折は抜かなくてはいけないのでしょうか?:歯科Q&A2018年01月05日

 

 2018年最初の初診は左下第一大臼歯を抜歯したほうがよいと言われた患者さんでした.

 X線写真を撮ってみると、左下のその歯は二本ある歯根のうち奥の方(遠心根)が破折していました.

 二根のうちの一本だけが破折しているのであれば、多少手間がかかるとしても、分割抜去のほうがよいことは言うまでもありません.
 全部抜いてしまってはもったいないことこの上もありません.

 2軒の歯科医院に治療法を聞きに行ったそうですが、いずれの歯科医にも抜歯と言われたそうです.
 抜歯後の処置については、一軒目のかかりつけの歯科医では抜いてインプラントか入れ歯、二軒目の歯科医には、このまま放置しておくと大変なことになるから、とにかく抜いてしまって、補綴物のことは後で考えましょうと言われたそうですが、インプラントを入れたい気配満々だったとのことです.

 インプラントを埋入するのであればそれなりにスペースが必要なので、分割抜去はありえません.
 一本丸ごと抜いてしまわないと、インプラントを入れるスペースが生み出せないからです.


 患者さんはインプラントはあまり入れたくないというのが希望でした.
 もちろん抜歯もしたくないのですが、一番心配していたのは、このまま放置しておくと、歯槽骨吸収がどんどん進んで大変なことになる、と言われたことでした.

 視診では歯肉に膿瘍を形成しているなどの症状は認められず、自覚症状もまったくありません.
 X線写真では多少の陰影は認められますが、それほど大きな骨吸収は認められません.
 しかも割れてしまったことがはっきり確認できる二つの遠心根はかなり離れて存在しているので、この歯根破折は破折を起こしてからずいぶん時間がたっている可能性が高そうです.
 つまり、この患者さんの場合、破折がおこったのは3年から5年くらい前ではないかと推察できるので、今さらあわてて抜歯する必要は毛頭ないわけです.

 骨吸収や歯根破折など通常見慣れないX線像をみると、どうしてよいか分からなくなって抜歯ししたくなったり、抜いてインプラントという歯科医の気持ちも分からなくはありません.しかし、たまたま撮影したX線写真に映った像で破折を見つけたからといって、根拠もなく「大変なことになる」と騒ぎ立てて、抜歯とインプラントを勧める態度は感心しません.

 ちなみに患者さんと話し合った結果、私たちが出した結論は、分割抜去も抜歯もせず、このまましばらく様子をみるというものでした.

 歯科医の仕事は歯を削って冠をかぶせたり、歯を抜いてインプラントを入れることではありません.
 患者さんの口の健康を守ることです.

 この患者さんの場合、経過観察をすることが口の健康を守るのに一番よいと判断したわけです.

●抜歯しないで分割で保存できるでしょうか=できると思います=歯科Q&A2018年01月04日



歯周病は怖くない」を拝読しご相談させて頂く次第です。

P31に、末期歯周炎で骨の吸収が進んでいている方に、歯根の分割治療を施された症
例が載っていますが、当方にも適応の可能性があるかお伺いします。

4,5年前にクラウンをかぶせた左下6番について。
二年前に外側歯肉におできのような口内炎ができ、歯周病の始まりということで、か
かりつけ医院でレーザーで切って頂きました。
しかし、その後もその場所には相変わらず常にぷっくりできておりました。

ひと月前、この左下6番がうずいて浮く感じがしたのでレントゲンをとってもらうと
歯根の分岐点から下の部分が真っ黒で、歯周病で(たしか内側とおっしゃたと思いま
すが)骨が溶けてなくなっているとのことでジスロマックを処方していただき、二週
間後にレーザーで切開し膿を出しましたが、歯茎がぽっかり空いています。 
指で動かすと動揺します。

歯根が割れているか、細菌感染しているから抜歯をすすめられたのですが、もし分割
治療で何年か延命できる見込みあるなら是非検討させて頂きたいと思っております。
ただ、ほかの歯の歯槽骨はほぼ正常ですので、歯周病というのとちょっと違うようで
す。

また私の場合、食いしばりが強いので、一月からナイトガードを始めました。

穴からまだ膿が出ているような気もし、早く悪いところを直さねば両隣の歯槽骨も
もっとなくなりそうで焦っております。

見込みがあるかどうかお知らせいただけましたら幸いに存じます。

よろしくお願いいたします。



 「歯周病は怖くない」をお読みくださり、有難うございます.

 ご質問は分割治療で何年か延命できる見込みがあるかということだと思いますが、延命の可能性は高いと思います.

 おできのような口内炎のことを膿瘍といいます.
 この膿瘍は根分岐部の病変が関係していると思います.
 根の分岐部になぜ病変ができたのか分かりませんが、原因としては歯根の破折か歯周病が考えられます.場合によっては根管の感染もあるかもしれません.

 はっきりしたことは申し上げられませんが、メールの内容から判断すると、歯を保存する処置を試してみる価値はありそうです.

 処置としては冠を除去して、根の分割あるいは根管治療などが必要になると思います.

 なお、この状態でおいておいても、両隣の歯に影響を与えることはありませんのであまり心配なさらない様にお願いします.
 詳しくは小西歯科医院のホームページ「抜かずに治す」の項目のうち「抜かないと他の歯に影響を与える」や「抜かないと隣の歯まで溶けてしまう」をご覧ください.

 歯根分割した症例写真はホームページでごらんになれます.


 小西歯科医院
  小西 昭彦


http://www.asahi-net.or.jp/~pi5a-kns/